【医療機器用スイッチング電源】医療用電源の漏れ電流について
家庭用医療機器の普及に伴い、より多くの人々が医療用電源に触れるようになりましたが、医療用電源と一般向け電源は異なる製品です。医療用電源は IEC60601 規格に準拠する必要がありますが、一般向け電源の準拠すべき規格は IEC60950 及び IEC60065 で、これらの規格は絶縁レベル、漏れ電流許容量、放射線及び干渉耐性、信頼性や製品寿命など設計上の特性の違いから派生したものです。
医療用電源を選ぶ際には、電源メーカーが漏れ電流量に応じて表示する B 形、BF 形及びCF形というグレードをよく目にします。このグレードはどのような基準で分類され、どのような規格要件があるのでしょうか。まずは、漏れ電流のグレードにかかわる装着部 (Applied Parts) について説明します。
装着部(Applied Parts): 一般的な使用において、物理的に患者に接触または患者が触れなければならない医療器具や機器のこと。例えばプローブ、心電計、手術台など。通常は患者に直接触れる医療電気機器に用いられる。
電極の保護方法により、以下の三種類に分類される。
- CF形: 装着部を心血管系に直接つなぐことができるもので、最も厳しい要求が課せられる。
- BF形: 要求される漏れ電流の許容値がCF形より緩やか。装着部を患者の体表につなぐことができ、複数の装着部との同時使用が可能。
- B形: 要求が最も低い装着部で、患者の体表につなぐことができるが、単独使用のみ可能。
当該規格で要求される漏れ電流許容値:
Leakage Current | Type B 形 | Type BF 形 | Type CF 形 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
漏れ電流 | NC | SFC | NC | SFC | NC | SFC |
Earth Leakage Current 接地漏れ電流 |
500uA |
1mA |
500uA |
1mA |
500uA |
1mA |
Enclosure Leakage Current 外装漏れ電流 |
100uA |
500uA |
100uA |
500uA |
100uA |
500uA |
Patient Leakage Current 患者漏れ電流 |
100uA |
500uA |
100uA |
500uA |
10uA |
50uA |
NC=Normal Conditions 正常状態/ SFC=Single Fault Conditions 単一故障状態
以上は医療機器・設備について定義されたものです。実際の使用においては医療用電源が患者の体に直接触れることは通常ありませんので、電源本体が装着部の規格要件を満たす必要はありません。しかし、医療機器全体としてはやはり装着部の形別(B/BF/CF)に基づいた安全評価及び確認をする必要があります。
医療用電源本体には、トランスの寄生容量とEMC(電磁両立性)に必要なYコンデンサから発生する漏れ電流があります。患者に直接つながる医療電気機器全体を装着部の形別ごとの要求に適合させるためには、電源供給部も漏れ電流の規格要件を満たさなければなりません。APDは長年にわたる医療用電源設計の経験をもとに、コストパフォーマンスと信頼性を併せ持ち、製品全体に要求される漏れ電流許容値に適合する医療用電源ソリューションを提供いたします。